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痛みを斬る

「先生、とにかく痛みを取ってください・・・」

しかし、痛みは日々ひどくなり、激痛に変わっていきました。彼女はインターネットのホームページで、がん性疼痛を抑える医者がいると知って、05年3月に来院しました。

レントゲン写真を撮るとがん細胞は骨盤を含め、全身に転移していました。レントゲン写真でわかるほどですから、末期症状でした。がんは腰椎、骨盤などの全身の骨、さらに肺や肝臓、脳にまで転移していて、完全に全身に転移してしまっている状態でした。

私は「半年間でこれほど転移するのはおかしいでしょう?なぜ発見できなかったのですか?」と聞きましたが、彼女はうつむくばかりでした。すでに食欲もなくなり、体は痩せ細っていました。
「先生、とにかく痛みをとってください。」
との依頼でしたが、私は
「痛みはとりますが、岡田さんの命はあと1か月か2か月が限度でしょう。」
と家族に告知しました。

岡田さんは点滴をするだけで食事も受け付けません。私は硬膜外ブロックを施しました。翌日、来院した岡田さんは、
「久しぶりに睡眠剤も飲まずにゆっくり眠ることができました。とても楽になりました」
と、激痛から久しぶりに開放されたようでした。

彼女の体重はすでに35キロまで落ち込んでいて、あとは死との戦いです。私は硬膜外にチューブを入れて、腰に牛乳びんほどの容器の注入用のポンプをつけて1時間に2ccずつの薬の注入がでいるようにして24時間硬膜外ブロックができるようにしました。

この治療は、さっそく彼女に効きはじめました。痛みが取れて、表情もだいぶ穏やかになりました。しかし、1日に5、6回の激痛があったので鎮痛剤も混注したところ、自力でトイレにいけるぐらいまで痛みが緩和されました。カステラなどの軽い食べものも摂れるようになり、痛みはだいぶ楽になったようでした。

結局彼女は、私の診断通り2ヶ月後に※黄疸が出てから3日後に安らかな表情で他界しましたが、死ぬ間際には最大時10の痛みが2ぐらいまで緩和されていました。

岡田さんは最後まで入院することはなく、自宅から通院したために家族が面倒を見ることができました。身近な家族に見送られたことは、岡田さんにとって幸せなことだったと思います。

彼女の亡くなる直前、痛みを抑えるために麻薬を使うかどうかは、ひとつのポイントでした。麻薬を使うと血圧が下がるために、延命ができなくなります。一度麻薬を使うと次々と強い麻薬が必要になり、血圧はますます下がります。また麻薬を使うと、全身管理が難しくなります。痛みを抑えるために麻薬を打つ間隔はますます短くなります。最高血圧が60台まで落ちると、死期は目前になります。

私は麻薬を使わず、ブプレノルフィン(レペタン)という非麻薬系の痛みどめを神経ブロックの薬に混注しました。上手な薬の使い方をすれば、麻薬と同じくらいの効力を発揮させることができます。今出ている痛み止めの中では、一番効く薬で、学会で最も注目されている薬です。この薬が効けば麻薬は必要ありませんので、患者は、麻薬中毒になることはありません。

末期のがん患者に麻薬を使い始めると約1ヶ月しか生きられないといいます。そのうえ効果は2、3時間です。血圧がどんどん落ちで食欲がなくなり、すべてを受け付けなくなります。さらに中毒症状も出始めます。しかし、関東地方のがんセンターのほとんどでは麻薬が使用されているようです。

私は麻薬を最終手段だと思っていますので、ギリギリまで使いません。岡田さんの場合、最後まで麻薬を使うことはありませんでした。最後に神経ブロックでも痛みを押さえられなくなり、がん患者が悲鳴を上げた時に始めて、私は麻薬を使用します。

私のクリニックに過去に末期がんで麻薬漬けの男性の患者さんがいらしたことがありますが、l来院1週間後に他界しています。がんの程度にもよりますが、麻薬を使えば最長でも2週間のところ神経ブロックなら2ヶ月は延命できるでしょう。

がんの痛みは骨に転移すると発生します。腰椎、鎖骨、肋骨、骨髄に転移すると激痛となるのです。どんなに我慢強い人でも耐えられない痛みなのです。がんの最大の苦しみは痛みです。痛みさえなければ穏やかな最期を迎えることができます。

末期がんの患者は激痛抑えるために、最後は病院に入院して治療を受けるのが一般的ですが、神経ブロック療法ならば、自宅でも治療ができます。最期は自宅で迎えたいと願う人には最適な方法です。

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